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番外編 灯台下暗し

「こんな簡単なことでこれほど時間をつかっていたとは、灯台下暗しだ」 「テウもこなつもどこにも行っていない。最初から同じ場所で潜伏していたんだ」 「なるほどな」 信孝さんも起きてきた。なぜか片手で顔を隠しながら。 「ナオの可愛い寝顔を見たら我慢できなくて間違いなく寝込みを襲う」 「こんな状況でも惚気られるお前が羨ましい」 「さすが、縣一家の次男坊。余裕だな」 弓削さんたちが苦笑いを浮かべていた。 「狙撃手がまだいるかも知れない」 「オヤジに連絡してくる」 「ウー、パーテーションを窓側に移動する。手伝ってくれ」 「ナオたちを起こさないように極力静かにな」 ベットのまわりで忙しく動き回る弓削さんたち。にも関わらず、よほど疲れていたのだろう。ナオさんたちは熟睡していて全く起きる気配がなかった。 「姐さん、寝れないとは思いますが、少しは横になってください」 「ありがとう弓削さん。でも……」 狭いところになぜか三人まとまって、バンザイで眠る子どもたちの寝顔が目に入った。 「ナオさんと子どもたちを守らなきゃ。足手まとい知れないけど、僕に出来ることは何でも手伝います」 「姐さんらしい。全然変わってない」 薄暗くて顔の表情まではよく見えなかったけど、それまで緊張し張り詰めていた弓削さんの声がが和らいだような気がした。 「オヤジに間違いなく怒鳴られそうですが、姐さんに二度惚れしました。ますます姐さんが好きになりました。姐さんのためなら喜んで死ねます」 「弓削さん、死ぬなんてそんな……駄目です。ちゃんと生きてください」 「嬉しいです。姐さん、失礼します」 弓削さんに陽葵ごと抱き締められた。 「え?弓削さん、あ、あの………」 突然のことに動揺し声も出なかった。

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