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番外編 テウさんと芫さんの接点

「なにかを振りかざし男が爆発したように早口で怒鳴り散らしている。日本語じゃないから何を言っているのかさっぱり分からない」 「ウーは記憶力に優れている。あとで柚原と鞠家に通訳してもらおう」 「そうだな。それがいい」 ナオさんが信孝さんの服にしがみつきぶるぶると震えていた。 「ナオさんごめんなさい。退院早々怖い目に遇わせてしまって」 「未知さんが悪いんじゃない。だから謝らないで。自宅にいるより、未知さんの側にいたい。僕のわがままを彼や卯月さんが聞き入れてくれたんだもの。足がこんなだから、子どもたちの世話もままにならない。困ったときはお互い様。そう言って手を差しのべてくれた橘さんと柚原さんにも感謝しなきゃ」 怯えながらも笑顔を見せてくれた。 「なぁ、弓削。テウはなんで本国でなく日本にいたんだ?記憶喪失だったのは身分を偽るためのヤツの演技だったのか?」 「リーの命令でテウは九鬼千夏に近付くため来日した。テウは、本国では当たると評判の占い師だった。でも実際は、相談に来た人たちを言葉巧みに騙し、カルト集団へ送り込むインチキ占い師だ。テウは口が上手い。先々代を始末し寡婦となった千夏と結婚し九鬼総業を乗っとるつもりだった。俺はそう思ってる。鳥飼には悪いが千夏はもうこの世にはいない。用済みとなって殺されたか、カルト集団に売り飛ばし黒竜が支配する私娼街に沈められたか。どっちかだろう」

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