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番外編 怒ったような怖い顔は二人には似合わない
いつの間にか寝てしまったみたいで、ハッとして飛び起きたら陽葵を真ん中に彼と三人川の字で眠っていた。
柚原さんと鞠家さんが鬼の形相で窓の外を凝視し仁王立ちしていた。
「柚原さん、鞠家さん」
近寄りがたい雰囲気に、声を掛けていいものか一瞬躊躇したけど、おっかなびっくり声を掛けてみた。
「もしかして起こしたか?」
「いいえ」
慌てて首を横に振った。
「怪我をしたサツを人質を取り、立て籠っている。膠着状態だ」
鞠家さんが淡々と言葉を紡いだ。
「こなつさんは?無事に保護されたんですか?」
「報道規制が敷かれ、詳しい情報が全く入ってこない」
「チカちゃんから連絡は?」
「まだない」
「優璃が何度も掛けているんだが、留守電になっている」
「じゃあ渡辺さんから連絡は?」
「それもまだだ」
「ついさっきまでオヤジも弓削もウーも起きていた」
「ひまちゃんもな」
「え?全然気付かなかった」
何事もなかったようにすやすやと眠る陽葵の寝顔を見つめた。
「泣いたのはちょっとだけだ。オムツを交換したらストンと眠ってしまった。お腹は空いてなかったみたいだ」
「柚原さん、鞠家さんありがとう」
「俺たちは何もしてない。な、鞠家
あぁ」
ふふっと思い出し笑いするふたり。
怒ったような怖い顔はやっぱりふたりには似合わない。いつもこうして笑っていてほしい。
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