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番外編 ここで生き直すんだ
ウーさんが一太と奏音くんの前にすっと立った。ウーさんだけじゃない。
奏音坊っちゃんを守るのが弾よけの役目。
昨日光希さんたちと東京に帰ったはずの玲士さんが気配もなく姿を現したから腰を抜かすくらい驚いた。
野暮ったい黒ぶちメガネを掛け出勤途中のサラリーマンといったいでたちだったから尚更だ。
女性が左目を手で隠しながら何かを呟いた。日本語ではなかった。
それに対しウーさんが中国語で答えた。
「多勢無勢だ。潔く諦めろ。子は親を選べないが、人生は自分で決めることが出来る。いいようにも悪いようにも出来る。それを決めるのは親ではない。きみ自身だ。今ならまだ間に合う。勇気を出してサツに名乗り出ろ。保護してもらうんだ。きみは日本人だ。日本 で生き直せ」
エレベーターが開いて鞠家さんが姿を現した。帰ってくるのが遅い。心配して様子を見に来てくれたのだ。
状況を瞬時に把握すると、ウーさんの言葉を通訳してくれた。
秦さんが近くにいた警察官を女性のところに連れてきてくれた。すると女性の顔が青ざめ、袖口に入れた棒のような細い手がガタガタと震えはじめた。
「一太と奏音を先に行かよう」
根岸さんとウーさんと玲士さんがふたりを守りながら、急いで移動をはじめた。
「未知、きみもだ。先に戻れ」
彼に言われエレベーターのボタンを押そうとしたとき、女性が喚き声を上げた。
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