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番外編 テウに引導を渡すのは俺の役目
「姐さん」鳥飼さんがあとを追い掛けてきた。
「立ち話しもあれだ」
柚原さんがハート部屋をノックすると、ドアが半分だけ開いた。
「那和、亜優悪いが、ナオにちょっとだけ場所を貸してくれって頼んでくれないか?」
「分かった。チェーン外すから待ってて」
信孝さんの本業は人材派遣会社とビル管理会社の社長。仕事で不在の間、みんなで協力しあって、ナオさんの話し相手と子供たちのお世話をすることになった。
「話し掛けても答えなかったのは日本語が上手く話せなかったからだった。千夏はテウと駆け落ちし、そのまま中国本土にあるカルト集団の本部に連れていかれた。そのあとの消息は不明だ」
渡辺さんが九鬼千夏さんのことを調べようとしたら、なぜか上司からストップがかかった。
その上、無事に定年を迎えたいのなら、この件には今後一切関わるな。釘を刺されたみたいだった。
渡辺さんは上からの圧力に屈せず、知り合いの刑事さんと一睡もせず徹夜で千夏さんのことを調べてくれた。
「俺みたく先々代に恩がある組員は多い。シェドはこなつを使い、彼らを取り込み九鬼総業を再興させ、対抗勢力である昇龍会を潰す魂胆だろう。こなつは戸籍上、先々代の娘になってる。リー亡き後、当局の厳しい取締りにあい、カルト集団は壊滅的なダメージを受けたが、黒竜という新たなダンベイを得て、楮山組を隠れ蓑に、日本での勢力を広げようとしている」
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