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番外編 睦さんのお母さん
「パトカーと救急車のサイレンの音すごいね」
那和さんがあたりを行ったり来たりしていた。そわそわして、じっとしていられない。そんな感じだった。
「那和まずは落ち着け」
「そんなこと言っても……」
「バーバもウーも鞠家も無理はしても、無茶はしない。大丈夫だ」
柚原さんが椅子に座るよう促した。
「シェドは千夏さんを暴力で支配し、自分たちのいいように洗脳したんだろう。どんな姿でもいい。生きてさえくれればそれで。ずっとそれだけを願ってきた。千夏さんに一目でいいから成長した睦を見てやりたかった。先々代の元妻や母違いの姉たちにどんなにいびられようが、辛く当たられようが、横道に逸れることなく立派に成長した睦の姿を……」
鳥飼さんが悔しさに唇を震わせ、目に涙を浮かべた。
フーさんがどこからともなくふらっと現れると、鳥飼さんの隣に座り、肩をそっと抱き寄せた。
「フー、シェ シェ。千夏さんは睦も一緒に連れて行こうとしていた。跡取りとなる男子を産み本妻に昇格したとはいえ、元妻やその娘たち、それに先々代のイロたちが同じ屋根の下で暮らしていた。普通じゃあり得ない。千夏さんはみんなからいびられ、酷い扱いを受けていた。だから、テウが心の拠り所になり駄目だとは分かっていながら身を委ねてしまったのかも知れない。千夏さんは、ひとり残された睦が冷遇されどんな仕打ちを受けるか分かっていた」
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