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番外編 シェドの本性
伊澤さんが目を光らせ渡辺さんたちを監視していたから、これといって怪しい動きはなかった。でも念の為、エントランスと組事務所とエレベーターを一斉に捜索した。その結果、組事務所のトイレと男性が座っていたソファーの下から小型の盗聴器が発見されたみたいだった。
「こんな分かりやすいところに仕掛けるとな。いかにも見付けて下さいといってるようなものだ」
「ズブの素人でもあるまいし」
見付けた渡辺さんが一番ショックを受けていた。まさかアイツが……信用してた部下のまさかの裏切りに愕然となった。
「九鬼家の人間で生き残っているのは、長男の睦と、長女で先代の姐だったいつみと、イロだった四女のまゆこの3名のみ。元妻の女たちと、イロだった女たちの消息は知らない。二女と三女は既に亡くなっている。いつみは母親譲りの気性の荒さと男勝りの性格で先代と舎弟らを顎で使っていた。組が解散するとき、先代と舎弟らを見捨て真っ先に逃げ出した。まゆこはいつみとは違い穏やかな性格で器量もいい、旦那と子どもがいるのに先代が手を出し自分のイロにした」
「なるほどな……ひと昔まえのようだな」
「先々代は身内でさえ信用しなかった。だから娘を妻として与えた。二女も三女も意に添わぬ男と結婚させられ一生添い遂げるなど、到底無理な話しだ。ふたりとも父親に殺されたも同然」
鳥飼さんの話しを渡辺さんはメモを取りながら熱心に聞いていたみたいだった。
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