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番外編 シェドの本性

「九鬼総業にいた頃はそういうもんだと思って見て見ぬふりをしてきたが、先々代も先代もシェドと同じ穴のむじなだ。フーは10歳も年上の、いい年した中年のおっさんの俺を愛してくれる。どうせすぐに飽きて捨てられる。先々代がそうだったように取っ替え引っ替え、代わりは幾らでもいる。だからいつ捨てられてもいいように腹を括っていた。でもフーは、この世に鳥の代わりはいない。鳥がどんな姿になっても鳥しか好きにならない。そう言ってくれた。女の嫉妬ほど怖いものはない。渡辺さん、二女と三女の身内を大至急調べて欲しい。楮山といつみの命が危ない。それと、まゆこと子どもを保護してくれ。大阪ミナミの繁華街の」 そこで言葉を止めると、鳥飼さんがメモ紙を渡辺さんに渡した。 「半年前だ、舎弟だった男が店の前で客引きをしていたまゆこを見掛けて、まゆ姐さんって声を掛けたらしい。まゆこは覚えていなかったがな。辞めてなければ今もこの店で働いているはすだ」 「分かった」 渡辺さんがメモ紙を大事そうに上着の胸ポケットにしまいこんだ。 「九鬼総業にいた頃より生き生きしてる。死んだ魚のような目をしていたのが嘘のようだ。お前を知ってる刑事はみな口を揃えてそう言ってる」 「敵である俺を快く迎えてくれたオヤジと姐さんには感謝しても仕切れません」 フーさんに睨まれながらも渡辺さんは鳥飼さんとじっくり話しをしてから帰っていったみたいだった。

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