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番外編 橘さんとチカちゃん

「チカ、柚を助けてくれてありがとう」 「今回のことでカルト集団とは無縁であっても決して他人事じゃない。マインドコントロールも特殊でなく日常の中でも起こりうること。いつ自分の身に降りかかるか分からない。広く認知されたんじゃないかしら。麻薬取締部のホームページのアクセス数、いつもよりも多いみたいなの。ノブくん、お礼しなきゃいけないのはアタシの方よ。ありがとう」 チカちゃんが頭を下げた。 「あれ?弓削は?さっきいなかったっけ?」 「ウーと廊下に控えている。正座していると足が痺れるから、足を崩すように言ったんだが、ふたりして頑固だから困る」 「仕事熱心でいいじゃないの」 チカちゃんが嬉しそうな顔をした。 「どうした?」 「だって弓削がいるんだもの。これほど嬉しいことないでしょう。姐さんが待ってるから、姐さんの弾よけは俺しか出来ない、他の若い衆には任せられない。姐さんが俺を必要としてくれてるから。何かあれば姐さん、姐さんって言ってたから、大好きな未知のそばに弓削がいるんだもの、これほど嬉しいことないから……もう、やぁね。なんで泣いてるのかしら」 チカちゃんが鼻を啜った。 橘さんがハンカチをそっと差し出すと、 「ありがとう」 受け取ると頬を伝う涙を拭った。 「地竜も、未知のことばかり心配してるって人伝に聞いたわ。いつか一緒に暮らせるといいわよね」 「それでは遥琉が毎回焼きもちを妬いて若い衆に八つ当たりするようになります。今のまま、遠距離婚のままでいいんです」 「ようは橘が未知を一人占めしたいだけでしょう?」 「どうしてそうなるんですか」 橘さんが額に手をおいてやれやれとためいきをついていた。

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