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番外編 橘さんとチカちゃん
「まぁ、あれだな」
喧嘩の仲裁に入った柚原さんもどうしたらいいのか分からず苦笑いを浮かべ頭を掻いていた。
「優璃、酸いも甘いも嚙み分けた夫婦になれるよう俺も努力する。だからチカのこと許してやってくれないか?おぃ優璃、待ってくれ」
橘さんはぷんぷんしながら居間を出て行ってしまった。
柚原さんは何度も転びそうになりながら後を追い掛けた。
「チカ」
彼と信孝さんの声が見事にハモッた。
「たまにはお子ちゃま抜きで夫婦ふたりきりで過ごす時間も必要よ」
「チカ、お前わざと……」
「朝から晩まで365日休みなし。それこそ寝る暇もなく仕事と子育てに追われているんだよ。一緒にいるとはいえ、お互いに気を遣ってさぁ、はっきりいってすれ違いの生活じゃん。だからね、余計なお世話だと思ったんだけど、こうもしないとふたりきりになれないでしょう」
幼児番組を見ていた太惺と心望が音楽に合わせお尻をふりふり、体を左右に揺らし、パチパチと手を叩いた。さすがは双子。動きが全く同じだ。
なんとも愛くるしいふたりの姿にそれまで強張っていたチカちゃんの表情がふっと和らいだ。
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