1816 / 4011
番外編 橘さんとチカちゃん
「欲する人が多ければ売り手市場になる。さほど宣伝はいらない。ドラックは例えていうなら強烈な毒性を持つ魔性のウィルスよ。新型のウィルスが上陸すると瞬く間に拡散し、多くの乱用者が出る。乱用者が出れば出るほど、シェドと紫竜の懐に入る金も大きくなる。彼らは人の欲をうまく利用してるわ」
「男は美人に弱い。基本、スケベだしな。客引きに、若い女と本番行為が出来ると誘われれば、さほど疑わず大金を払って連中にほいほい付いていく。女を気持ちよくさせる魔法の薬だと言われれば、ドラックだと頭の片隅では分かっていても興味本位からつい手を出してしまう。それが破滅へのはじまりだとも知らずにな。言っとくが俺は伊澤一途だ。この30年それは変わってない。だから、そんなに怒るな。気に障るようなこと、まだしてないだろう」
不機嫌な皺を眉間に作った伊澤さんに、根岸さんが狼狽えていた。
「連中の欲望を満たすためなんの罪もない女と子どもが、こうしている間も犠牲になっている。それが事実だ。根岸はそれを言いたかったんだろう」
弓削さんが芫さんに飲ませられたドラックは市場にまだ出回っていない新種だったみたいで、どんな効力があるか試しに飲ませたみたいだった。弓削を人体実験に使うなどもってのほか。彼やチカちゃんたちが怒るのも無理ない。
ともだちにシェアしよう!

