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番外編 あやみさんとなやちゃん

「ふたりして怯えるばかりで何も話そうとはしない。サツもお手上げみたいだ」 「知らない人たちが突然家に押し掛けてきたんだよ。すごく怖かったと思う。お母さんのまゆこさんの消息も不明だし……ねぇ遥琉さん、ふたりはどうなるの?」 「児童相談所にこのまま保護してもらうか、もしくは鳥飼が一時的に預かり母親の消息が掴めるまで面倒をみるか――ふたつにひとつだろうな」 「ただし面倒をみることに関してはフーさんと睦さんが猛反対しています」 ちょうどそのとき、びしっとスーツに身を包んだ橘さんが帰ってきた。 「そりゃあ、そうだろう。虫が良すぎる。頼める義理じゃねぇのに。鳥飼までとばっちりを受ける」 「まま、たー」 大好きな橘さんの姿を見付け、追い掛けてきた太惺と心望。我先に抱っこをせがんだ。 「一張羅のスーツだ。汚したら大変だ。パパっておいで」 彼がふたりを抱き上げ、胡座をかいた膝の上に座らせた。 まゆこさんの娘さんたちは警察が保護している。橘さんが鳥飼さんの代理人として警察署に赴き、娘さんたちと面会してきた。 「漢字表記は分かりませんが姉の方はあやみ。もしかしたらこなつさんより一つ上かも知れません。妹の方はなや。たいくんとここちゃんくらいです。あやみさんは妹だけでも匿って欲しい、自分はひかりヶ丘厚生学園に戻る、そう言って私たちの話しなど一切聞こうともしません」 「サツには黙りだったのに、たいしたもんだ。橘が子ども好きだってのが、ふたりに伝わったんだろうな、きっと。でも、待てよ」 彼があることに気付いた。

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