1820 / 4011
番外編 あやみさんとなやちゃん
「母親のもとに帰るっていうのが普通だろう。ひかりヶ丘厚生学園って、もしかして、児童養護施設か?」
「えぇ、そうです」
「生きていくのに精一杯で子どもたちを預けたのか。なるほどな」
「いえ違います」
橘さんの表情がみるみるうちに険しくなっていった。
「気になったので鳥飼さんに聞きながら、まゆこさんのことを調べました。2年前、あやみさんを連れ九鬼家から突然出ていったそうです。その後、なやさんの父親である男性と籍を入れました。あやみさんが施設に預けられたのはそのすぐ直後です。娘は色狂いの血統書付きのサラブレッド。母親が不在中、継父を誘惑し関係を持った。このままいったら夫を取られる。親しい知人にはそう漏らしていたみたいです。勝手に九鬼家から連れ出しておいて、身勝手にもほどがあります。出ていくならひとりで出ていけば良かったんです。まゆこさんがいなくても、鳥飼さんが睦さん同様愛情を注ぎ面倒をみていたと思いますよ」
腕を組み鋭い口調で愚痴をこぼす橘さん。
「橘、頼むからおっかねぇ顔すんな。スマイルだ。あぁ~~だから言わんこっちゃねえだろう」
あまりの迫力に太惺と心望が怯えてしまい、火が付いたように泣き出した。
ともだちにシェアしよう!

