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番外編 あやみさんとなやちゃん
「鳥飼……さん」
どうしても気になって組事務所を覗くと、フ―さんの膝枕ですやすやと眠っていた。
身長も体格の差も歴然としているふたり。
こうして見ると夫婦というより、親に甘える幼子の様だ。
「ごめんなさい。邪魔するつもりはなかったの」
家に戻ろうとしたら、
「アネサン」
フ―さんに呼び止められた。
「ココ」
空いている隣の席をぽんぽんと叩いた。
「いいの?」
フ―さんがにっこりと微笑んで大きく頷いた。
テーブルのうえには便箋が置いてあった。隣には朱殷色に染まった封筒が。
「読んでも構わないって言ってる」
鞠家さんが奥から姿を見せた。
「人の心はなんでこうも移ろいゆくものなのか……遣る瀬無さに鳥飼は泣いていた。気付いたら眠っていた」
「鳥飼さんが話してくれたまゆこさんのイメージと、橘さんが調べてきたまゆこさんはまるで別人だもの。鳥飼さんが一番ショックを受けていると思う」
「それで心配になって様子を見に来たのか。姐さんらしいな」
鞠家さんがくすっと笑った。
「なやさんって、奈梛って書くんだ。あやみさんのことは一切触れてない」
「鳥飼があやみが気の毒だ、そう言って涙を堪えていた」
鞠家さんが鳥飼さんを哀しげな眼差しで見つめた。
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