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番外編 あやみさんと奈梛ちゃん
「アタシったらもうやぁ~~ね。肝心なことをすっかり言い忘れてたの。睦って、千夏のぼーやだよね?」
ーこの声は……あ、でも千里さんが福島にいる訳ないか。あの、失礼ですけど誰ですか?なぜ、俺や母の名前を知ってるんですか?ー
怪訝そうな睦さんの声が返ってきた。
「アタシ、乾千景。千里のマブダチよ」
「あのね睦さん、チカちゃんは遥琉さんと信孝さんの幼馴染みなの」
ーそうなんだ。初めまして乾さん。俺、茨木睦です。旧姓九鬼ですー
「チカちゃんでいいわよ。宜しくね」
ー宜しくお願いしますー
「かたっ苦しい挨拶はここまで。要件だけ手短に言うわ。睦、驚かないで聞いて。千夏は生きてるわ」
ーえ?……-
チカちゃんのまさかの一言に睦さんは茫然としていた。
「信頼できる情報筋によれば、千夏はカルト集団に連れていかれたあとこなつを産み、教祖の命令でこなつとテウを置いて、リーの懐刀の男に献上された。カルト集団から身を隠すように今もその男とマカオで暮らしているわ。現在の名前は……睦、大丈夫?」
ーいっぺんに言われて頭が混乱していますが大丈夫です。ご無沙汰してますー
「元気そうね」
ーお陰様でー
「今の名前はムー チィェン シァ。新しい情報が入ったらまた連絡するわ」
ーはい、ありがとうございますー
電話を切ったあと、
「未知、何があっても子どもたちを手放しちゃだめよ。いいわね」
「チカちゃん、顔近い……です」
真剣な眼差しでチカちゃんに言われ、箸を握ったまま頷いた。
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