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番外編 あやみさんと奈梛ちゃん
「睦さん、睦さん」
何度呼び掛けても反応がなかった。そのうちぶちっと電話が一方的に切れた。
「チカちゃん、さっきの音って銃声だよね?どうしよう……あ、そうだ。遥琉さんに急いで連絡しないと」
「未知、落ち着いて」
チカちゃんが笑顔で話し掛けてくれたけど、軽いパニックを起こしていた僕は、チカちゃんの顔を見る余裕すらなくなっていた。
「まずは落ち着こうか」
「未知」
「そうだよマー」
「チカちゃんの言う通り」
四人に言われてハッとして顔を上げた。
「楮山組は一枚岩じゃない。ハルくんたちから聞いてるでしょう?」
「はい」
「カタギになった睦を新組織の代表にまつりあげ、楮山と上田に対抗しようとする不埒な輩がいるみたいよ。シェドの騒動に便乗し、反旗を翻そうとしてるの。誰とは言わないけどね」
恐らく西岡さんのことだ。
「だから、千里が先に手を回して、睦夫婦を別な場所に避難させた。腕っぷしのいい護衛を付けてね。かぶちゃんも部下を数人派遣して、ふたりの護衛にあたらせるって言ってたわ。昇龍会のフロント企業に堂々と乗り込んでくるとは、度胸がいいわね。というか、捨て身の行動に出るくらい連中は追い詰められている。まぁ、そういうことよね」
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