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番外編 亜優さん、本領発揮
「亜優は何を熱心に調べていたんだ?」
鞠家さんと柚原さんがスマホの画面を覗き込んだ。
全文中国語。何が書いてあるか、ちんぷんかんぷんで全然分からない。
「カルト集団の元女性信者のプログみたいだ」
鞠家さんが画面を指先でスクロールした。
「何が書いてあるんだ?」
「どこにでもある話しだ。権力争いに金と女とシェド……所詮、教祖も生身の人間だってことだ。教祖を唯一無二の神様と信じ身も心も全てを捧げたのに裏切られたって書いてある」
「シェドの毒牙にかかり教祖は暗殺された、ともな」
「これってもしかして……」
投稿者の名前を見たふたりが驚愕した。
「ジゥ グゥイ。つまり、九鬼って書いてある」
「じゃあこれを残したのは千夏か」
「いや、千夏は中国語が分からないはずだ。誰かが千夏の名前を騙って書いたのかもしれない」
「なるほどな」
それからしばらくの間、腕を前で組みふたりしてなにやら考え込んでいた。
「あ、いた」
「柚原さん」
パソコンを見ていた彼と橘さんが同時に声を上げた。
「まさかホテルのスタッフに紛れ込んでいたとはな。上手く化けたもんだな」
【happy birthday】と書かれた大きなケーキを乗せたワゴンをゆっくり押すホテルのスタッフの女性。それは間違いなく鈴木さんだった。
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