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番外編 柚原さんの焼きもち
「はぁ?」
「姐さんに似て、亜優も突拍子もないことを考えるな」
「でも意外と当たってるかも知れない」
柚原さんが缶ビールを片手に台所に向かった。
「三本菅先輩の家族ですか?」
「あぁ」
「私もよくは知らないんですよ。生活費と学費を稼ぐためにアルバイトに明け暮れていましたから。他の人のことなど構っている暇なんてありませんでしたから」
「あれ?オヤジの世話になっていたんじゃないのか?」
「確かにそんな時もありましたね。懐かしいです。その頃の遥琉は女性にとにかくモテモテで、たくさんお付き合いされている方がいましたからね。私など眼中にありませんよ。ただの気紛れで抱かれることはありましたが愛してるとは一度も言われたことはありません。私や千里の境遇を憐れみ、可哀想だと思ったのでしょう」
橘さんが聞こえるようにわざと大きな声を出した。
「橘、だめ、それ以上はだめだ」
「どうしてですか?私を散々弄んでおいて、ごめんの一言もなかったでしょう」
「だから、それは……」
いつものように仲良く口喧嘩をはじめたふたり。こどもたちがあんぐりと口を開け唖然としていた。
その隙に太惺がお皿の上に並べてあった焼く前のハンバーグを鷲掴みにするとぱくっと一口、口にした。
「ままたん、たいへん」
「たいくん生のたべちゃった」
「パパ、ぼぉーとしないの」
「はい、すみません」
遥香に言われ彼が慌てて太惺を抱き上げ、橘さんたちのところへ連れていった。
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