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番外編嵐の前の静けさ
昨夜の嵐が嘘のように雲ひとつない青空が広がっていた。
一太と奏音くんはまわりの大人たちの声や態度で大変なことが起きていることに気付いていたみたいだけど、幼い兄弟を不安な気持ちにさせないように、普段通りに明るく振る舞い、元気いっぱい登校していった。
サツが張り込んでいるとはいえ楮山組の事務所前はやけに静かだ
お兄ちゃんや遼成さんが逐一連絡を寄越してくれるから、今何が起きているかリアルタイムに知ることが出来た。
「まさに嵐の前の静けさだな」
テレビの前にちょこんと座り幼児番組を仲良く見ている子どもたちを眺めながら、彼がぽつんと呟いた。
遥香は黄色い園カバンを背負い、一緒に登園する晴くんと未来くんがハルちゃんって呼びに来るのを今か今かと待っていた。
でも待てど暮らせどなかなか来なくて。
「何かあったのかな?胸騒ぎがする」
心配になった彼が事務所に電話を掛け、ナオさんの様子を見てくるように頼んだ。
するとすぐに連絡が入って、
「ちょっとした段差に躓いて転んだみたいだ。電話を掛けたとき、ちょうど晴が助けを求め、事務所のドアを叩いていたらしい」
「ナオさんの様子を見てこなきゃ」
立ち上がろうとしたら、
「鞠家が紗智と那和を呼んだから大丈夫だ。何かあれば連絡を寄越す」
ナオさんが心配でいてもたってもいられなかったけど、僕か行っても足手まといになるだけ。紗智さんと那和さんにお願いしよう。
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