1851 / 4013

番外編 九鬼の女大丈夫

爆竹のような音がして窓ガラスが割れ、轟轟と音を立てて燃え盛る炎が勢いよく噴き出した。 楮山組の組事務所兼自宅マンションから火の手が上がったのはそれから1時間後のことだった。 彼や橘さんたちが固唾を飲んでテレビ通話中のスマホの画面を食い入るように見つめていた。 火が出る直前に鳥飼さんのところに、姐のいつみさんから電話が掛かってきた。 「なんでこの番号を知ってるんだ」 不信感を露にする鳥飼さんにいつみさんは、 ー九鬼に残してきた弟分らを決して見捨てず、再就職先を探してやったりいろいろと面倒をみてるのを私が知らないとでも思った?ー くすりと笑った。 父親譲りの気性の激しさと勝ち気な性格で女大丈として知られているいつみさん。 ー私ってやっぱり男運がないわね。つくづくそう思うわ。鳥飼が10歳早く生まれていれば私は鳥飼を間違いなく亭主に指名していた。それにしてもうちのひとにも困ったものね。もちろん責任は取らせたわ。当然でしょう。ガサ入れだけでも不名誉なことなのに、このような内紛を起こすとは、楮山組の名折れでしょうー いつみさんはぞっとするほど凄惨な笑みを見せた。

ともだちにシェアしよう!