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番外編 言わずが花
「鳥飼さん、睦さんにこのこと伝えるの?」
「正直迷ってます。言わずが花ということわざもありますし、伝えない方が睦の為かなと……」
「鳥飼さん、俺がもし睦だったら真実を知りたいと思う」
「真実を知るのは怖いよ。でも、隠し切れないよ。もし真実を知ったとき、自分だけ知らなかった。これ一番傷付くよ」
紗智さんと那和さんがちょうど隣の部屋から出てきた。
「盗み聞きするつもりはなかったんだよ」
「ごめん鳥飼」
「ふたりにも聞いてもらって少しは気が楽になった。フーにいつも心配ばかり掛けさせているから、今回ばかりは心配を掛けさせる訳にはいかないと思ったんだ。ありがとう」
カタン、ドアが少しだけ開いて可愛らしい顔がじーと僕たちの方を見つめていた。
「ごめんな奈梛。かくれんぼうの途中だったな」
鳥飼さんが声を掛けると、ささっと隠れてしまった。
「そういう訳なんで失礼します」
「良かったね鳥飼。奈梛も一緒に出勤オーケーもらって」
「オヤジとカシラには感謝しかない」
「一ヶ月事務所内禁煙でしょう?この際だからみんなで煙草をやめればいいのに。健康にも地球にも優しいよ。一石……なんだっけ?」
「一石二鳥だよ那和」
「あ、それだ」
ぱちんと那和さんが両手を叩いた。
「やめるのは無理だが、一日に吸う本数は確実に減るだろうな」
フーと奈梛が待ってるからと鳥飼さんが事務所の中に入って行った。
「女の人って怖いんだね」
「ゾッとした。見て、マー」
両手をパーにして見せてくれた。ふたりとも汗をびっしょりかいていた。
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