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番外編 真実は悲しいものだった
「バーバ優しすぎるから」
「マーが一番で、家族も一番、だけど同じくらい他のひとにも優しいもん」
紗智さんと那和さんが顔を見合せうんうんと相づちを打っていた。
「もうそうなってしまったからには夫婦関係は修復不可能だ。よくまぁ、10年も続いたもんだ。那奈は離婚届に判子を押して遥琉に渡すつもりでいたんだが、夫婦関係が破綻したそもそもの原因は自分にある。だから、面と向かってごめんなさいをなかなか言い出すことが出来なかった。そんなときだ、遥琉が未知と一太と出会ったのは……というか引き会わせたのは橘だが。年も離れているし、バツイチだし、那奈の元亭主だし、やくざだし、何がなんでも反対するつもりでいたんだ。未知は可愛い姪だ。絶対に嫁にくれてやるもんか、って。でも、多数決で負けてしまってね。渋々認めるしかなかったんだ」
「多数決?」
「播本のカフェに遥琉を呼び出してみんなで話し合ったことがあるんだよ。俺と播本と橘と根岸と遼成とあと……そうだ上総もいた」
「え?お義父さん?」
耳を疑った。
「あぁ。遥琉が上総に初めて一太を紹介したときだ。人見知りせず、恥ずかしがらず、堂々と自分の名前を言うことが出来た一太を上総はべた褒めしていた。上総はたったひとりで一太を育て上げた未知のその芯の強さと心の優しさが、もしかしたら遥琉を変えるかも知れない、そうぴぴっと来たみたいだ。だから、うちに嫁に来て欲しいと播本に頭を下げたんだよ」
「お義父さんが僕のために?全然知らなかった」
「ふたりが付き合うことに反対したのは俺と遼成のふたりだけだった」
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