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番外編 九鬼の女

消防隊の懸命な消火活動により出火から一時間ほとで火は消し止められた。火元の部屋はほぼ全焼。住人と思われる遺体が発見された。その後の捜査で遺体は楮山でもいつみさんでもない第三者の人物の可能性が高いと判明した。 全く状況が見えないなか、夜半過ぎ、思いがけない人が彼のもとに顔を見せた。 「アタシがあの男と一緒に死ぬと思った?」 突然の来訪者は、いつみさんだった。 女丈夫として知られている彼女は、昼間の名残もなく、きりっとした和服姿になっていた。 「なにをしに来たんだ」 彼に呼ばれた鳥飼さんが組事務所に駆け付けた。 「あら、ずいぶんとぞんざいに扱うのね。それが恩人の娘に対する態度⁉いい度胸してるわね。何様のつもりなの?」 上から目線のいつみさん。長い足を組むとタバコを取り出した。 「鳥飼、なにボサっとしているの。早く火をつけてよ」 「事務所内は原則、禁煙だ」 「はぁ?なにそれ、ばかじゃないの」 いつみさんがげらげらと笑いだした。 「用がないなら帰れ」 「用があるから来たんじゃない」 鳥飼さんだけじゃなく、彼や鞠家さんら幹部を睨み付けた。 これほど傲慢で気性の激しい女性を見たことがない。 彼も開いた口が塞がらなかったみたいだった。

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