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番外編 九鬼の女
ウーさんがいつみさんを外に連れ出そうとしてドアを開けたら、痺れを切らした渡辺さんら捜査員が礼状を手に雪崩れ込んできた。
「事務所内原則禁煙だ。守ってもらわないと困る」
「そうか、悪かったな」
煙草をくわえていた渡辺さんがすぐに携帯灰皿を取り出し煙草を捩じ込んだ。
「九鬼いつみだな、逮捕状が出ている。一緒に来てもらおうか。そこのふたりもだ、事情を聞かせてほしい」
「渡辺さん待ってくれ」
鳥飼さんの顔色が変わった。
「ふたりには家族から捜索願いが出されている。悪いようにはしないから安心しろ」
肩に手をそっと置いた。
「すべて楮山がしたこと。私はなにもしていないわ」
礼状を突き付けられてもいつみさんは顔色一つ変えなかった。腕を前で組み渡辺さんを鋭い目付きで睨み付けた。
「じゃあ聞くが、マンションで見付かった遺体は誰だ?」
「知らないわ」
「それじゃあ、これに心当たりは?」
「ある訳ないでしょう。知らないわ」
写真を見せられても全く動じなかった。
挙げ句には楮山と上田、それにタカさんとミツさんをはじめとする若い衆が勝手にやったことだ、自分は関係ないと開き直った。
捜査員に連行されていくいつみさんをやれやれとため息をつきながら見送った彼が事務所に戻ると、鳥飼さんがスマホの画面をじっと見つめていた。
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