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番外編 九鬼の女

ーそういえば弁護人がふたりいたな。チャラチャラした若い姉ちゃんは椅子に座りもうひとりの弁護人に指示をしていた。あと少しで終わるというとき、気分が悪いと訴え退出したんだ。ハイヒールは履いていなかったかも知れない。うろ覚えですまないー 「それだけ分かれば十分だ。ありがとう」 電話を切ると、すぐ電話が掛かってきた。 「渡辺からだ」 嫌な予感がするといいながら電話に出ると、二言三言、言葉を交わしたのち、 「……そうか、分かった」 思い詰めたような表情を浮かべて電話を切った。 「いつみさんになにかあったの?」 「警察署に到着し、捜査車両から下りようとしたときに狙撃された。肩を撃たれが命には別状はない」 「もしかして久坂さんが撃ったの?」 「おそらくな」 「タカさんとミツさんは?無事なの?」 「別の捜査車両に乗っていて、先に警察署に到着していたから難を逃れた。事情を聞かれたのち、家族に引き渡される」 「良かった……でも、手放しでは喜べないんだよね」 「痴漢は楮山が仕組んだ。ふたりとも無罪だ。甲崎も国井も鬼じゃない。再就職先を紹介してやってもいいって言ってくれている。これを期にヤクザを辞め、家族のために再出発出来るといいな。風当たりは相当強いが、今度こそ負けないでほしい」

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