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番外編 ミツさん
「俺らのところの姐さんが姐さんで良かった。一歩も二歩も後ろに下がってオヤジや俺ら幹部を立ててくれる。若い衆を顎でこき使うことは決してしない」
「みんなちゃんと名前で呼んでくれる。アレとかコレとかじゃなく。ちゃんと名前で。しかも呼び捨てじゃなく"さん"付けだ。それがどれだけ嬉しいか」
「鞠家さんも柚原さんも褒めないで下さい。その、恥ずかしいです……」
真っ赤になって俯くと、
「謙遜するな。本当のことだ」
「恥ずかしがり屋のところがまた可愛い」
「それにやさしい人です。こころが澄んでいて、一服の清涼剤みたいに涼しげで。見渡す限りむさ苦しく暑苦しい男ばかりですからね、未知さんは癒しです」
「もうヤダ、橘さんまで……」
火照った顔に恥じらいが掠めた。
和気あいあいと談笑していたら鳥飼さんから鞠家さんに電話が掛かってきた。
「どうした?」
「ミツだっけ?彼だけ家族が迎えに来なかったみたいだ。タカが俺が面倒をみるから一緒に東京に帰ろうと言ったんだが、迷惑を掛ける訳にはいかないと断ったらしい」
「確か妹がいるはずだ。子どもが小さくて迎えに来れないのかもな。それとも別の理由があるのかも知れない。調べてみるか」
柚原さんがスマホを手にすっと立ち上がった。
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