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番外編 ミツさん

ミツさんは菱沼金融でしばらくの間アルバイトすることになった。若い衆が共同生活するアパートで寝泊まりすることになり、蜂谷さんが世話係に抜擢された。ヤスさんは他の用で忙しいみたいで、組事務所にもほとんど顔を出していない。 「ヤスか?買い物難民の高齢者を救うべく、移動スーパーの店長をしている。知り合いの移動スーパーの店長から、入院している間、店を代わりにやって欲しいと頼まれたみたいだ。ヤスも頼まれれば断れない性分だからな。困ったときはお互い様だ。心配しなくても人助けが終わればそのうち帰ってくる」 「それならいいけど」 「ハチは元デカだ。職務質問のプロだった男だ。勘の鋭さ、洞察力は俺たちの遥か上を行く。幸い、ミツはハチが元デカだとはまだ気付いていないようだ。サラ金で首が回らなくなりヤクザに身を売った元サラリーマンだっていう鳥飼の説明を鵜のみにしている」 ミツさんは彼や鳥飼さんに、妹は入院中で子どもは施設に預けている。入院費を稼がないといけないから金が必要なんだと説明した。 「楮山と同じメシを食っていた男だ。絶対に信用するな。もし何か言われたらすぐに俺に言うこと。ナオにもそう説明した」 「どうしよう一太や奏音くんに注意しろとも言えないし……」 「子どもは素直だからな。口止めしても何かの拍子にうっかり口を滑らせるとも限らないしな。鞠家たちと話し合ってみるよ」

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