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番外編 哀しいひと
千里さんと同じ格好をしているって彼が言ってたことをふと思い出した。
髪が長くて、細身のボディラインと大きな胸を強調するかのような、かなり丈の短いワンピースを着ていたような。靴は確か、先がとんがっていてピンク色で高いヒールの靴だったような。踵に何か貼っていた。なんだろう……あ、そうだ、靴擦れ防止の絆創膏だ。
千里さんがおニューの靴で恐らく履きなれていないのかもって話していた。おニュー自体私語よね。いまの若いひとは使わないわよね。とも話していたっけ。
夢華さんは足首にミサンガみたいな何かを巻いていた。藁をも掴む思いで、足をじっと見つめた。
「ねぇ遥琉さん、溶けて足の踵に張り付いているの、これって絆創膏じゃないかな?」
「絆創膏?」
「うん。靴擦れ防止の絆創膏。川合さん、ハイヒールを履き慣れていなかったかも知れない。楮山に愛されるために、千里さんみたく強くてカッコいい女の子を演じていたのかも知れない」
「なるほどな。楮山も昔、千里の熱狂的なファンだったからな」
「え?そうなの?」
意外なことに驚いてキョトンとすると、
「そんな驚くことでもないのに。きみは本当に面白い子だ。見てて飽きないよ」
クスクスと苦笑いしながら、肩をそっと抱き寄せてくれた。
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