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番外編 ミツさんの正体
「よ、ハチ、どうだ調子は?」
「おぅ弓削」
社長の根岸さんの後任に指名されたのは蜂谷さんだった。数ヵ月までマル暴のデカだった男が、まさか闇金の社長になるとは……誰も予想していなかった。
「ネクタイが曲がってるぞ」
「そうか?このくらい別にいいだろう」
「駄目だ」
弓削さんが蜂谷さんの前に歩み寄ると、一旦ネクタイをほどき、結び直した。
「髪にごみが付いてる。それに、スーツにも埃が付いてる。机のしたにでも潜ったのか?たく、しょうがないな。若い衆のお手本になるんだ。身なりはきちんとしないと駄目だろう」
髪についたごみを手で払い、スーツに付いた埃を払ったりと甲斐甲斐しく世話を焼く弓削さん。
朝も夜が明けると同時にふたりでビルの辺りを見回ったりと、はたから見たら恋人同士にしか見えないふたりに、ミツさんがむっつりした表情を浮かべ、弓削さんじゃなく蜂谷さんを睨み付けていた。
勘の鋭い弓削さんと蜂谷さんはそのことにすぐに気付いたけど、尻尾を出すへまをしないミツさんの化けの皮を剥がすためあえて気付かないフリを続けていた。そしたら、ミツさんが、
「あの」
喉から唸り声をあげると蜂谷さんの胸ぐらに掴み掛かった。
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