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番外編 ミツさんの正体
彼が心配で何度時計を見たか分からない。
「ひまちゃんの面倒は私がみます。未知さん先にご飯を食べてください」
橘さんがお昼ごはんを運んできてくれた。
「ありがとう橘さん。救出されたから、それで終わりじゃないんですよね。みんながみんな、幸せになる訳じゃないんですよね」
「命を預かって育てるということはそれだけ責任重大ということです。子どもは自分の思い通りになんか育ちませんからね。もしかしたら先輩は根岸さんと伊澤さんが助けに来てくれるのをずっと待っていたのかも知れません。火を付ければあのとき自分たちを助けてくれた刑事に会えるかもしれない。そう思ったのかも知れませんね」
「根岸さんと伊澤さん、昔も今も変わらずラブラブで羨ましい。お互いを必要として、支え合って、三十年もずっと一緒にいるなんて。本当にすごい。僕なんかまだまだだ。二人の足元にも及ばない」
「ふたりは唯一無二の存在ですからね」
橘さんが陽葵をそっと抱き上げてくれた。
「未知さんも遥琉にとって、唯一無二の存在ですよ。未知さんがいてくれるから、遥琉は仕事に打ち込めるんですよ。それに十年、二十年なんてあっという間に過ぎていきますよ」
橘さんがゆっくり食べてくださいね。そう言って陽葵を太惺と心望がいる居間へと連れていってくれた。
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