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番外編 あやみさん
九鬼あやみさんの安否が確認されたと連絡が入ってきたのはその日の午後だった。
お昼前に三本菅さんの活動を支えてきた支援者たちに付き添われ近くの交番を訪れたあやみさん。自分より男を選びゴミのように捨てたあの女を今さら母親とは思っていない。どんなに最低な女でも、奈梛には母親が必要だ。助けてほしいと応対した警察官に頭を下げた。
元更正施設がテナントとして入居していた建物は一階から四階までド派手なラブホに変わっていた。最上階の五階は楮山の舎弟たちが根城にしオレオレ詐欺などの特殊詐欺を行っていると専らの噂だ。
「人命救助が最優先だ。礼状が取れ次第、大阪府警が強制捜査に入ることになった」
彼がある情報筋から聞いた話しだと、ラブホを隠れ蓑に大がかりな薬物売買が行われているとたれ込みがあり、数ヵ月前からマトリの長谷川さんらがひそかに内偵を進めていたみたいだった。
「まゆこも旦那も、そして鈴木もおそらくそこにいる」
「え?鈴木さん?あやみさんと一緒じゃあ……」
「あやみを庇い、連れていかれたみたいだ」
彼の表情は重く沈んでいた。
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