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番外編 熱烈なラブレター

「至福のひとときをお過ごしだと思いますが……」 ドアの向こう側から橘さんの声が聞こえてきて。 「やべ、未知、寝たフリだ。絶対に声を出すなよ」 彼が頭から布団をすっぽりと被らせてくれた。 「寝たフリをしていても別に構いませんが、二点ほど連絡事項があります。まずひとつ目は、鈴木さんが発見され病院に緊急搬送されました。意識はありますがかなり衰弱しています。連れ去られてから三日あまり飲み物も食べ物も一切口にしてなかったみたいです。ふたつ目はあとにします。あ、そうだ。肝心なことを言い忘れるところでした。始発の新幹線でこちらに向かうと地竜さんから連絡がありましたよ。ではおやすみなさい」 いつもの癖で返事をしようとして、慌てて手で口を覆った。 「間違いなくドラックが混入されてある。連中の言うことは信用できない。鈴木は警戒し、一切何も口にしなかったんだろう。まぁ、無事だったから良しとしよう」 ごそごそと彼の体が動いて。接着剤みたく背中にぴたりとくっついてきた。 「奈梛の両親、もしかしたら……」 橘さんが明言を避けたということは、つまりそういうことなんだろう。覚悟は決めていたとはいえ、奈梛ちゃんが不憫でならなかった。

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