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番外編 熱烈なラブレター
「宝贝《バオベイ》、我喜欢你《シーホヮンニィ》、爱你《アイニィ》」
呼び鈴が鳴り、玄関の扉を開けると、静かな低音の品位ある声が続いて下りてきて、気づけば引き締まった腕に抱き締められていた。
「未知の声を聞いたら間違いなく会いたくなるから、ずっとずっとずっーーーと我慢していたんだ。やっと未知に会えた」
「お帰りなさい地竜さん」
「ただいま未知。ごめんな、帰ってきて」
「ううん」
首を横に振った。
「二十日が限界だった。俺に遠距離婚は無理だっていうのが改めてよく分かったよ」
「そこ、玄関先でいちゃつくな」
つま先立ちになり背伸びして肩越しに彼を見ると憮然面していた。ごめんなさい遥琉さん。決してそういう訳じゃないんだけどな。気まずい空気を一蹴してくれたのは柚原さんだった。
「手っ取り早く言えばマイスイートハニーただいまだ。もっと分かりやすく言えば、ベイビーとっても好きだよ。とても想っているだ。朝っぱらから元気な奴だ。お帰り風来坊」
「風来坊とは失敬なヤツだな」
「だってそうだろう。間違ってはいないはずだ」
「まぁ、それもそうだな」
地竜さんがくすくすと笑いだした。
地竜さんの帰国の目的は千夏さん救出作戦を国内に潜伏している仲間たちと実行に移すためだった。三日、未知と子供たちの側にいたら中国に出発する。そう話してくれた。
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