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番外編善栄に関わらなければ……

「九鬼の家に生まれて来なければ……善栄に関わらなければ、いつみもまゆみも、そして千夏も久坂も、みんな違った人生を送っていたかも知れないな」 「鳥飼と睦もだ」 地竜さんが腕を前で組み険しい表情で襲名式の映像をじっと見つめていた。 「ダオレンもずいぶんとまぁ出世したもんだ。楮山は?見付かったのか?」 「本部が総力をあげて探しているが、まだ見付からない」 「そうか。遥琉、風のたよりで少し気になることを耳にしたんだが」 「なんだ?」 「未知の暗殺計画が水面下でひそかに進められているって」 彼の表情が一瞬だけ強張った。 「そうか、やっぱり本当だったんだ」 「楮山がいなくても石山がいる。未知は俺と地竜の唯一の弱点。アキレス腱だ」 「ヤツにとって俺は目の上のたんこぶだからな。それにしても驚いたな」 「なにがだ」 「ダオレンはストイックな男だ。人前で女を侍らすなど有り得ない。それに、ほら見てみ、服のなかに手をいれて乳を揉んでる。こっちは尻。こっちは手をキャミのなかに入れて直接弄ってる。これじゃあ、ただのエロ親父だ。昔の面影は微塵もない。俺の知っているダオレンじゃない」 「シェドと芫と関わるうちに変わってしまったんだろう」 「ただのエロ親父にか?」 「男は女で変わるもんだ。俺がそうだったように。地竜、きみもだろう⁉」 ふたりがそんな会話をしていたら、 「遥琉、地竜さん、子供たちの前ですよ。分かりますよね?」 橘さんがニッコリと微笑んだ。 笑っていても怒っているのは明らかで。ふたりしてぶるっと背筋を震わせていた。

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