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番外編 謎の女
「卯月さんさっきの画面に巻き戻して!」
台所から柚さんが吹っ飛んできた。
「さっきの画面ってどの画面だ」
「直接弄っているって話していた画面よ。橘、子供たちに見せたくは分かる。でも少しだけ。女の顔を見せて欲しい」
「よく分かんねぇけど、待ってろ」
「音って聞こえる?」
「聞こえるけど子供たちには刺激が強すぎる」
彼がヘッドホンを柚さんに渡した。
柚さんが真剣な眼差しで画面に映る女性を見つめた。
「東京にいたとき、都内の高級ホテルで開催されたお茶会に誘われたことがあるの。あまりの広さにトイレに行って迷子になって三十分近くホテルのなかをウロウロしていたの。ある部屋のドアが少しだけ開いていた。靴が引っ掛かって完全に閉まっていなかったみたいね。甘いタバコの匂いに、タバコってこんな匂いしたっけ?そう思いながらちらっとなかを覗いたの。ふたつあるベットの上で下着姿の女性たちがじゃれあっていた。その女性たちはついさっきまで一緒にお茶を飲んでひとたちだった。この女が数人の男たちを床に座らせタバコを吸わせていた。女の足元には金が散らばっていた。【マネー、ハイナ、オンナダケルヨ~~モットマネー、マネー】片言の日本語で男たちを煽っていた。それを見たら急に怖くなって家に逃げ帰った」
「そうか、思い出すだけでも怖いのに。ありがとう柚」
「部屋は広かったからスイートルームじゃないかな?中国語を話す男性がいた。人数までは分からないけど最低ふたりはいた」
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