1907 / 3282
番外編 能ある悪女は爪を隠す
何度か画面を巻き戻しながら、柚さんが耳を澄ませて聞いていた。
「自信はないけど、その時の男の声に似てるのは……」
柚さんが指を指したのは石山と、マイクを片手に司会進行をしていた男だった。
「能ある鷹は爪を隠すになぞらえたのかしらね。能ある悪女は爪を隠す。遼禅がよく言っていた。遼成も龍成も兄も女には一切興味がないから、なんの効果もなかったけどね」
「女はこえーからな。いつみよりおっかねぇ女がいてもおかしくない」
柚さんから提供された情報をすぐに千里さんに伝えた彼。司会進行をしていた男と女性の素性を大至急調べてくれと頼んだ。
鞠家さんは男性に見覚えがあるみたいで、俺より知っているかも知れないと伊澤さんと蜂谷さん、元刑事のふたりを早速呼んでくれた。
奈梛ちゃんはパパが亡くなったこと。ママが逮捕されたこと。なんでママが逮捕されたのか。鳥飼さんの服にしがみつき静かに聞いていたみたいだった。
「ね、とりしゃん」
「ママが迎えに来るまで鳥とフーと一緒に待ってようか?」
「うん」
鳥飼さんとフーさんはまゆこさんが奈梛ちゃんを迎えに来るまで責任をもって育てることを決めた。
フーさんは真剣な表情で、柚原さんに通訳してもらい彼に子どもに焼きもちを妬かない方法を教えてくださいと頼んでいた。
ともだちにシェアしよう!