1911 / 3281
番外編 彼と地竜さん
「地竜さん、さっきから電話が鳴りっぱなしですよ。放置していないで出てあげたらどうですか?」
「ほっといても用があればまた掛けてくる。俺は忙しい」
「未知さんに甘えるのが、でしょう」
「次いつハグが出来るか分からないんだ。一秒たりとも時間を無駄にしたくない」
地竜さんが背中にしがみついてきた。
まるで駄々を捏ねる子どもみたいだ。
ヤツは特殊メイクで誰にでも自在に化けることが出来る。それにヤツは強い男を見ると自分好みにボディメイクしモノにするド変態だ。ユゲLOVEは健在だ
地竜さんはシェドの影武者が芫さんだとはっきり断言した。たとえ仲が悪くても教団を守るためには、組織を守るためには背に腹は代えられない。渋々ながらも手を組んだんじゃないか。そう話していた。
弓削さんはひとりになったあともシェドの影武者の男…芫さんをしばらくの間見つめていたみたいだった。手の傷痕を見るたび心がズキズキと痛む。結局、芫は俺になにがしたかったのか。ただの暇潰しの遊びだったのか。本気で愛していたのか。いまも分からない。俺はどうしたらいい。橘さんと柚原さんに苦しい胸の内を打ち明けたみたいだった。
ーボス、マーに十分甘えただろう。そろそろ真面目に仕事をしようか?ー
電話の向こう側から流暢な日本語が聞こえてきた。
「今日だけ大目に見てくれ」
ーあ?ー
男性の声色がガラリと変わった。
ともだちにシェアしよう!