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番外編 マザコンじゃなく、愛妻家
ー今日だけ、じゃない。いつもだ。何かあればすぐマーだ。マーがいないと寝れない。マーがいないと寂しい。マーも同じ空を見てるかな。マーの声、聞きたい。恋しい。ボス、そういうの日本人、マザコンっていうー
「マザコンじゃなくて、愛妻家だ」
ー愛妻家じゃなくて、だだの駄々っ子ー
「だから違うって。駄々っ子じゃない」
妙に噛み合わないふたりの会話がおかしくて、彼も僕も思わず噴き出しそうになった。
この前連れてきたふたりはアメリカに置いてきたみたい。この声の主の男性は死神の幹部で日本国内に潜伏し、シェドと緑竜の動きずっと監視していたみたいだった。
「マーに挨拶がしたい?俺は構わないが……」
地竜さんが彼をちらっと見た。
「芫みたいに未知をはなから敵視するど変態野郎はお断りだぞ」
ー変態、ボスのほう。オレまだましなほうー
「自分で言うな。まずは名前を名乗るのが礼儀ってもんだろう」
ー卯月先生《マオ ユェ シィェンシォン》、覃《たん》冬雨《ドン ユィ》。年は35。乙女座。血液型AB。性別男。見た目はそんなに悪くない。身も心も男。好きな人は……ー
「どうせボスっていうんだろう」
電話の向こう側から「大正解」パチパチと手を叩く音が聞こえてきた。
「なんだか調子が狂うな。なぁ地竜、お前のそばにはもうちょいまともな男はいないのか。覃といい、芫といい、あのふたりといい……」
しまいには頭を抱えてしまった。
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