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番外編死出の旅
「お祖父ちゃんが無事で良かった」
元気そうな姿に安堵したら涙がぽろぽろと溢れてきた。
「泣くことないだろう」
「だって……」
「末っ子の陽葵が成人式を迎えるまではそう簡単には死なないよ。心配を掛けてすまなかった」
大きな手が髪をぽんぽんと撫でてくれた。
「お祖父ちゃん、楮山さんは?上田さんは?」
聞くのも怖かったけど、うやむやにはしたくなかった。
「楮山か?つくづく悪運が強い男だ。生まれ故郷の石巻に向かっている。弾よけの男たちは重傷だが命に別状はない。上田はおそらく岩谷兄弟と一緒だ。石山をぎゃふんといわせ、失脚させるべく絵図を描いているんだろうよ」
楮山を逃がすべく自ら盾になり、ワゴン車に轢かれた弾よけの男たち。
楮山はこうなることをあらかじめ予想していたのか、奏音くん宛の遺書を彼らに託していた。
「遺書というよりK駅構内にあるコインロッカーの鍵だがな。橘と鞠家らが向かっている」
「そんなに簡単に楮山さんを信用して大丈夫なの?危なくないの?開けた瞬間ドカンとか……嫌だよ。誰かが傷付くのもう二度と見たくない」
「未知、きみって子は……」
お祖父ちゃんが驚いたように目を見張った。
「万が一のことを考え、マル暴のデカたちに立ち合ってもらうと連絡が来ているから大丈夫だ。心配するな。クスリとかヤバイのが出てきたらそれはそれで面倒なことになるからな」
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