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番外編仕組まれた罠

「心臓の音、ヤバイくらいにすごいだろう」 地竜さんが自嘲した。 「幾多の死線を乗り越えられてきたのは未知、きみのお陰だ」 「僕は別になにもしていないよ」 ぶんぶんと首を横に振った。 「未知の存在そのものが俺らの生きる希望なんだ」 彼がつむじの辺りに軽く口付けをしてくれた。 地竜さんも負けじと前髪に触れるか触れないくらいの口付けをしてくれた。その瞬間、心音が一気に跳ねあがった。 「俺のもだけど、未知の心臓の音もすごいな」 「だって……」 いちいち聞かなくても分かるくせに。遥琉さんのいじわる。 「未知の怒った顔も、困った顔も、照れて恥ずかしがる顔もみんな好きだ。一番好きなのは笑った顔だけどな」 「遥琉、それ俺が言うと思っていたのに」 「早く言わないお前が悪い」 「寝顔は文句なしに天使だ。どうだ遥琉、参ったか」 「地竜、てめぇー」 仲良く口喧嘩をはじめたふたり。 そんなふたりに足音を忍ばせてそぉーと近付いてきたのは……。 「そこのふたり、いま、何時だと思っているんですか!未知さんを寝せないで、あなたたちは……まったくもぅ」 橘さんの雷がやっぱり落ちた。

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