1929 / 3281
番外編 仕組まれた罠
結局ふたりは裸のまま僕の足にしがみついてそのまま眠ってしまった。陽葵も彼も地竜さんも朝まで一度も目を覚ますことはなかった。
「パパたち、なんではだかなの。もう、やだ、はずかしい」
先に目が覚めた遥香が顔を真っ赤にし、両手で顔を覆った。昨日の僕みたく。
「お風呂から上がってきて、そのまま疲れて寝てしまったの。だから、もう少しだけ寝せてあげよう」
起こさないように人差し指を唇の前で立てて小声でしーと言うと、
「うん、わかった」
遥香が大きく頷いた。
「パパとおじちゃん、なかいいね。ぱぱたちよだれでてるよ。おいしいごはんたべてるのかな?」
ふたりの寝相があまりにもそっくりで、遥香がぷぷっと笑いだした。
コインロッカーから実際に異臭がしていたと橘さんが教えてくれた。
「私たちがコインロッカーに到着する直前に利用者から何か腐ったような臭いがすると110番通報があったんです。そのロッカーを開けたらグーに握った手がそのまんま入ってました。冷凍されていたのでしょう。この暑さで溶けて、それで臭いがしたみたいです。私たちが真っ先に警察に疑われました」
「橘さん、それってもしかして……」
藍子さんの喉仏かも知れない骨を今も大事に持ち歩いていたということは、もしかしたら体の一部も冷凍し大事にしまっていたの知れない。寒くもないのに背筋がぞっと寒くなった。
ともだちにシェアしよう!