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番外編 仕組まれた罠
「奏音くん、光希さんママから電話ですよ」
「え?本当に?」
「嘘をついてどうするんですか。待たせると悪いですよ」
寝起きとは思えないくらいにこにこの笑顔になる奏音くん。身だしなみを整えなきゃ光希さんママに嫌われちゃう。大急ぎで顔を洗ってくると、ぴょんと跳ねた髪を手で直しながら戻ってきた。
彼が根岸さんに相談すると、俺じゃなく、遼、龍、光希に相談するのが筋だ。そう答えが返ってきて、すぐに電話を掛けた。
なにを話しているのかな?すごく楽しそうだ。でも、その表情はだんだんと暗いものになっていった。
「これから渡辺が鑑識を連れて組事務所に来る」
「一太くんパパ、もしママじゃなかったからどうなるの?」
「う~ん、どうなるんだろうな」
「寒くて暗いところでずっと一人ぼっちだったんでしょう?ママじゃなくてもちゃんと供養してあげようよ。かわいそうだよ」
「そうだな。まずはお巡りさんに聞いてみないとな」
「うん」
ー奏音が見ないうちにまた大人になってるー
ー泣くヤツがいるかー
ーうるさいな、嬉し泣きだ。悪いかー
電話越しに遼成さんと龍成さんの声が聞こえてきた。
「すっかり親バカだな」
彼が苦笑いを浮かべていた。
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