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番外編仕組まれた罠

組事務所から戻ってきた奏音くん。ただいまも言わず自分の部屋に駆け込んだ。渡辺さんら警察官に色々と聞かれ相当怖かったはず。光希さんの声がするスマホをずっと握り締め、根岸さんたちに心配を掛けまいとわざと明るく振る舞っていたみたいだけど、電話が切れて、寂しさが一気に押し寄せてきたみたいだった。 「光希ママに会いたいよな。じぃじが近くにいるとしても、光希ママは特別な存在だからな」 布団を頭から被り奏音くんは声を震わせ泣いていた。彼が宥めても一向に泣き止む気配はなかった。困り顔の彼となにげに目が合った。 「未知、橘と一緒に奏音を抱っこしてやってくれ 。ママとままたんにハグされたら、速攻で泣き止むはずだ」 「は?なぜに私まで」 橘さんが怪訝そうに眉を寄せた。 「ひとりが泣いていたら、次から次に泣きはじめて大合唱がはじまるからだ。ほら、見てみ。たいくんが半べそをかきはじめた。橘、この通りだ頼む」 「背に腹はかえられませんよね。分かりました。未知さんは背中側をお願いします。ひまちゃんが起きてもすぐに抜け出せるように」 「はい」橘さんと一緒に奏音くんの隣にそっと静かに横になった。

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