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番外編 遅くなってすまない
「すげぇ量の揚げ物だな。どうしたんだ?」
彼が組事務所から帰ってきた。
「夕ごはんはかなたくんリクエストなんだって」
「そうか、奏音頑張ったもんな」
「あとねカレーもつくるんだ。僕はにんじんさんむくのおてつだい」
「そうか。怪我しないようにな」
「うん」
彼が一太の頭を撫でていたら、
「パパたいへん。たいくんカレーのはこたべてる!」
カレーのルウを割るお手伝いをしていた遥香が彼に助けを求めた。
「橘、なにか代わりに食べるものないか?」
「そこに野菜スティックがあります」
「そこってどこだ?ないぞ」
あちこち探し回る彼に、
「ふたりの手が届くような場所に置いてませんよ」
橘さんが少しだけ声を荒げた。
てんやわんやになりながら、なんとか太惺からカレーの箱を取り上げることに成功したけど、太惺はすっかりヘソを曲げてしまった。
柚原さんや弓削さんがふたりかがりで宥めていたけど、なかなか機嫌が戻らなかった。
その日の夜。賑やかに食卓を囲む子どもたちの笑顔に目を細めながら藍子さんの骨壺の上に布で包まれた喉仏の骨をそっと置く根岸さん。遅くなってすまない。涙声で謝罪の言葉を口にした。
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