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番外編 仕組まれた罠

空が藍色からようやくしらみはじめたころ。 「オヤジ大変です」 息を切らし蜂谷さんとヤスさんが駆け込んできた。 「なんだ朝っぱらから騒々しい。子どもたちが寝ているんだ。頼むからもう少し静かにしてくれ」 昨夜、取調室から別棟にある留置所に移動していた久坂さんが足を滑らせ階段から落ちて救急車で病院に向かう途中に事故に遭いつきさっき亡くなったみたいだった。 「緊急車両が交差点に入ります。道を開けてください。左折します。アナウンスして徐行しながら救急車が交差点を左折しようとした時、猛スピードでダンプカーが正面から突っ込んできた。ダンプカーはそのまま逃走し、一時間後に近くの空き地に乗り捨てられているのが発見された。ナンバーを調べたら三日前に盗難届が出されていた」 「久坂は石山に口を封じられたんだ。家族が住むアパートも放火され、多数の怪我人が出ている」 「陽葵の一カ月健診は明後日だ。何事もなければいいが……」 彼の表情がどんどん険しくなっていった。

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