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番外編 仕組まれた罠

「本部から召集がかかったんだろう。オヤジはここに残れ」 「でも根岸」 「ここには楮山の遺児が三人いるんだ。動くべきじゃない。それこそ相手の思う壺だ」 「老いぼれだって役に立つときはある」 お祖父ちゃんと根岸さんが本部執行部の若頭でもある彼の名代として本部に向かうことを決めた。 「上田に譲治と達治兄弟に岩谷兄弟、なにを考えているか分からない連中ばっかりだ。みな主に忠実だからな。たとえ楮山が死んだとしても未知暗殺を実行に移してくる」 「遥琉も度会も守らなきゃならない大事な命がある」 「でも……」 「昔を思い出したんだ。べつに恨まれるようなことをした覚えがないのに、ことあるごとに伊澤が俺に噛みついてくるんだ。なぜかいつも喧嘩腰だし。その理由が三十年もかかってようやく分かった。伊澤は俺と根岸の仲を邪推して焼きもちを妬いていたんだってな。秦も伊澤に焼きもちを妬かれ大変だったみたいだ。みなそれぞれ守りたいものがあるから頑張れるんだ。この老いぼれと熟年新婚夫婦に任せてくれ」 「頼むからその熟年新婚夫婦ってのは……」 「間違ってはいないはずだ」 「そりゃあそうなんだけど」 照れて真っ赤になる根岸さん。廊下に控えていた伊澤さんも照れ笑いを浮かべていた。

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