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番外編 一難去ってまた一難
駅に向けて出発したものの道路がいつになく混雑していて信号待ちの車の長い行列が続いていた。
「信号が赤に変わり停車した車に前をよく見ていなかった後続車両が追突したみたいだ。弓削からメールがきた。未知、体調はどうだ?」
「1ヶ月ぶりに外に出たからかな?お日さまが眩しくてまだ目がちかちかするけどそのうち慣れると思う」
「そうか。車酔いしていないか?」
「うん、大丈夫だよ」
「窓、少しだけ開けようか?」
「もぅ、心配性なんだから。遥琉さんが思うほどそんなに柔じゃないよ」
彼の大きな手が肩にそっと置かれ、そのまま静かに抱き寄せられた。
「明日休診日で普段の倍、患者がいたから疲れただろう」
「心配してくれてありがとう」
「家に無事に辿り着いたらだけど、一時間くらい横になったほうがいい」
彼の腕がすっと離れ、上着を脱ぐと頭の上からすっぽりと被せてくれた。
「遥琉さんどうしたの?」
「弓削と柚原が病院を出たときからずっとマークしている2人乗りのオートバイが後ろから近付いて来ているんだ。楮山のことだ。罠を何重にも仕掛けているはずだ」
フルフェイスのヘルメットを被っている。体格、背格好からして男性。弓削さんか柚原さんと電話で話す彼の声色がガラリと変わり、すぐそこまで危険が及んでいることを示唆していた。一難去ってまた一難だ。
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