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番外編蜂谷さんの千里眼

大きな川にかかる橋を渡り終えたころ、オートバイに追い付かれた。 「掴まっていてください」 壱東さんがアクセルを強く踏み込み、青から赤に変わる寸前の信号機を強引に直進した。 「たく、しつこい連中だ」 赤信号を無視し猛スピードで信号機に突っ込むオートバイ。片側一車線しかない道路を、けたたましくクラクションを鳴らしながら前を走る車を強引に追い越し、蛇行運転を繰り返しながら猛追してきた。 「未知大丈夫か?」 「うん、だい……」 工事中なのか道路がでこぼこしていて、車がガタゴトと大きく揺れた。 「遥琉さん」 怖くて彼の体にしがみついた。 「大丈夫だ。壱の腕を信じよう」 宥めるように背を優しく擦ってくれた。 「子どもたちが待っているんだ。こんなところで死ぬわけにはいかない」 不安な気持ちを一蹴するかのように力強く言うと、服ごと包み込むように抱き締めてくれた。 「壱、この先に葬祭会館がある。柚原が先回りしているはずだ」 彼や蜂谷さんはこんな緊迫した状況にも関わらず落ち着いていた。幾多の修羅場を乗り越えてきたのだろうか?壱東さんも落ち着いていた。 「分かりました」 「線路沿いにこのまま真っ直ぐだ。交通量が少なくて良かった」 蜂谷さんが手のひらに隠してあるマイクで誰かと連絡を取り合っていた。

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