1962 / 3255

番外編 蜂谷さんの千里眼

「O葬祭会館駐車場入口と書かれた大きな看板の手前にある細い道に入れ」 蜂谷さんの指示通り壱東さんがウィンカーを右に出した。 「壱、この先道幅が狭いからスピードを落とせ」 「はい」 「線路の下がトンネルになっている。ついさっきまでここら辺はゲリラ豪雨に見舞われていた。通行止にはなっていないが水が溜まっている可能性もあるから注意しろ」 蜂谷さんの読み通り水が溜まっているのか前を走る車はゆっくりと低速で徐行していた。後ろには軽自動車が二台。オードバイは何度もクラクションを鳴らしていた。 「鳴らされるほうも堪ったもんじゃないな」 「オードバイのふたりは恐らくよそ者。土地勘がない。こんな狭い道、対向車が来ても避けられないから、みな避けて通る。姐さん、弓削とフーが葬祭会館の駐車場で待ってます。もう少しだけ辛抱してください」 「あと二分、我慢してください。連中の好きなようにはさせません」 壱東さんが決意を新たにハンドルを握り締めた。

ともだちにシェアしよう!