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番外編 哀しきひと

表舞台には立たず裏方に徹して欲しいとフーさんに懇願された鳥飼さんは組事務所で電話番をしながら経理を担当している。 カミさんを危ない目に遭わせたくないのもあるが、ただ単に他の男に鳥飼を見られたくないみたいだ。彼がそんなことを話していた。 「ねぇ遥琉さん、青空さん明日の朝までもしかしてこの格好でいるの?」 「身も心も未知になりきるつもりでいるから、おそらくな」 「弓削さんどきどきして眠れないんじゃないかな?」 「どうして?」 「だって青空さんすごく可愛いから」 「まぁ未知にそっくりだしな。間に挟まれるりんりんとフーが大変だな」 「ワンルームに大の大人が四人だよ。狭くて暑苦しい。引っ付くなってまた喧嘩していないかな?」 「喧嘩するほど仲がいいっていうだろう。大丈夫だ」 彼がくすくすと愉しげに笑いながら肩をそっと抱き寄せてくれて。頭をぽんぽんと撫でてくれた。 「フーも青空も弓削に教えてもらいたいこと、聞きたいことが山のようにあるみたいだ。四人で一緒にいれる時間は限られているからな。一秒たりとも時間を無駄にしたくないみたいだ」 彼の言う通り弓削さんは病院に戻らなきゃならない。青空さんもおじさんのところに戻らなきゃならない。四人でいれる時間は限られている。 弓削さんも青空さんもここで一緒に暮らせればどんなにいいか。尊お兄ちゃんに会うのは正直まだ怖いけど、僕には彼や地竜さんがいて、尊お兄ちゃんに青空さんがそばにいるんだもの。なんとかなる。いつかは乗り越えなきゃならないもの。

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